懐かしい昭和のラジオがよみがえる──TBWA HAKUHODOが開発した AIデバイス「RADIO TIME MACHINE」で高齢者の記憶と笑顔が取り戻される

懐かしいあの年のニュースを聞きながら、ヒット曲に耳を傾ける。
時間を巻き戻して、若き日の思い出がよみがえる──
こんなラジオ体験をもたらす新しいAIデバイスが、
今、介護施設で高齢者の人生に彩りをもたらしている。

昭和のラジオが次世代の高齢者ケアに

TBWA HAKUHODO(博報堂系広告会社)が3月5日に公開した「RADIO TIME MACHINE」は、
ダイヤルを1950年〜2025年の間で操作すると、その年のニュースとヒット曲を
紹介するラジオ番組のような音声コンテンツを自動生成するAIデバイスです。

1950年代のラジオ機器をモチーフにした設計

デバイスの筐体は、高齢者が若い頃に親しんだ、1950〜60年代のラジオ機器をイメージ。
液晶画面に映し出される目盛りは周波数ではなく西暦になっており、
ユーザーはシンプルなダイヤル操作で、聞きたい時代を選択できます。

音声コンテンツは毎日自動更新されるため、利用者は継続的に新しいコンテンツを楽しむことが可能。
コンテンツの長さも設定でき、数分のループから数時間まで対応しています。

AIが生成する「当時のラジオ」の音声体験

このデバイスのもう一つの特徴は、音声コンテンツの品質です。
ニュース原稿はWikipediaの過去の出来事を参考に生成AIが自動作成し、
開発関係者30名以上の音声データを学習したAIボイスが、
当時のラジオ番組特有の話し方や抑揚で読み上げます。

その結果、聴き手は「まるで過去のラジオパーソナリティが語りかけている」
というような懐かしく自然な体験を得られるのです。
ニュースの合間には、当時のヒット曲が実際に流れ、
時代の空気感をより一層リアルに再現しています。

介護施設での実証実験で、笑顔が8.7%増加

実用化を視野に、TBWA HAKUHODOはニチイ学館と共同で、
介護施設でのプロジェクトをスタートさせています。

実証実験の驚くべき結果

1月〜2月に実施された事前実証では、
利用者の様子を複数の指標で測定しました:

  • 表情解析:笑顔の値が平均8.7%上昇(最大23.8%上昇したケースも)
  • 身体活動:身振りや手振りが10%増加
  • 発話量:1分あたり10.8語増加

さらに、ラジオを聴く前は思い出せなかった情報が、
聴いた後には即座に語られるようになるなど、
記憶の呼び起こし効果も確認されました。

認知症の症状緩和にも期待──北里大学との共同研究開始

今春から、TBWA HAKUHODOは北里大学医療衛生学部と共同研究を開始します。
研究の焦点は、RADIO TIME MACHINEが認知症の「行動・心理症状」
(落ち着かない、怒りっぽい、意欲が低いなど)を緩和できるかという点。

表情分析や行動分析などの科学的手法を用いて、
このデバイスが次世代の高齢者ケアツールとなり得るかを明らかにしていく予定です。

介護スタッフと利用者の「会話のきっかけ」に

介護現場は人手不足が深刻です。スタッフは
「もっと利用者とコミュニケーションを取りたい」と考えながらも、
世代差から共通話題を見つけづらいという課題を抱えていました。

RADIO TIME MACHINEは、その課題を解決するツールとなります。
懐かしいニュースやヒット曲が、利用者とスタッフの
世代を超えた会話のきっかけを自然に生み出すのです。

全国数百施設への本格導入を目指す

ニチイ学館は、共同研究の成果を踏まえ、
廉価版の製造と複数施設での導入検証を計画しています。

全国に数百ヵ所の施設を持つニチイ学館において、
実証実験で高い評価が得られれば、
本格的な展開へ移行する見通しも示されています。

エンタメから福祉まで、広がる活用可能性

TBWA HAKUHODOは、RADIO TIME MACHINEの今後の展開として、
介護・福祉領域に限らず、音楽やエンタテイメント領域での
活用可能性も検討中。

新しい筐体デザインや廉価版開発など、
デバイス自体のポテンシャルはまだまだ広がりを見せています。

北里大学 医療衛生学部 福田倫也教授のコメント

日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えており、
2025年には65歳以上が全人口の29.4%を占めると予測されています。
認知症患者の増加は喫緊の課題であり、介護施設における
高齢者同士、高齢者とスタッフの対話促進が求められます。

「過去の情報に触れることで記憶が呼び覚まされる
RADIO TIME MACHINEに、高齢者の生活がより豊かになる可能性を感じています」

取り組みの詳細を動画で見る

プロジェクトの詳細は、ドキュメンタリー映像でも紹介されています:

  • ロングバージョン(8分):
    利用者の反応や記憶の変化を丁寧に記録
  • ショートバージョン(90秒):
    導入検証の様子をコンパクトに紹介

まとめ

懐かしいラジオの音色は、単なるノスタルジアではありません。
高齢者の記憶を呼び起こし、笑顔を増やし、
介護スタッフとの関係性を深める──
RADIO TIME MACHINEは、テクノロジーが人の心に
どう寄り添うべきかを示唆する、新しい試みとなっているのです。

参照元: https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2026/03/6364.html