英国のオーディオ業界団体AudioUKが、英国のポッドキャスト・ラジオ・オーディオブック業界のためのマニフェストを発表しました。英国の選挙を踏まえて、政党・政治家がオーディオ業界を支援するための4つの政策を示したものです。今日はこのニュースを紹介します。
AudioUKは英国各地を拠点としたオーディオ主導の制作部門の業界団体で、会員企業は英国全土に約140社、各部門の売上高の95%をカバーしているそうです。会員企業は2,000人以上を雇用し、映画、テレビ、演劇、ビデオゲーム、アートなど、オーディオが使われるあらゆるところで貢献しているそうです。そんな団体がまとめた2024年マニフェスト4点、どんなものなのか見ていきましょう。
1、オーディオ制作の軽減税制(APTR)の導入
ポッドキャストの普及により、英国のポッドキャスト広告は2026年には8,000万ポンド(日本円で149億円)になると予測されています。現在英国にはTV、映画、ビデオゲーム、アニメーション、その他多くのクリエイティブ産業に対する減税措置があり、成長著しいポッドキャストなどオーディオ業界においても「オーディオ制作の軽減税制(APTR)」を今後12ヶ月以内に導入すべきと提言しています。これにより、より持続可能なオーディオの制作と英国経済の成長に貢献することができるとしています。
2、「英国オーディオコンテンツ基金」の復活・「英国グローバルオーディオIP基金」の新設
2019年から2023年に一度実施されていたオーディオコンテンツの開発、制作、流通、マーケティングを支援することを目的としたファンド「英国オーディオコンテンツ基金」は、一定の成果を出せたため、復活させるべきであると提言しています。
また、映像領域で設立されている「英国グローバルスクリーン基金」同様、オーディオ領域においても「英国グローバルオーディオIP基金」を新たに設立すべきと提言しています。理由としてオーディオは、テレビ、映画、ライブ ツアー、書籍などを通じて収益化できるIPを作成するための非常に費用対効果の高い方法であり、英国にとって重要なクリエイティブ輸出品となりうるからとしています。
3、オーディオのスキルとトレーニングのための資金
オーディオ業界成長のため、新世代のタレントに向けて質の高いオーディオのスキルとトレーニングの開発と提供が必要であり、これを支援すべく政府はオーディオ業界と協力して資金を提供すべきであると提言しています。
4、BBCラジオ / オーディオにおけるさらなる創造的競争
BBCは2024年4月までに自社の音声コンテンツ制作のかなりの部分をBBCスタジオに移すことを計画しています。これは、BBCが Amazon Music、Audible、Wonderyなどの商用音声プロバイダー向けの番組の制作と競合することを意味しています。この対策として政府はBBCに対してニュース以外のオーディオ制作については、外部のオーディオ制作者も競争入札できるよう開放すべきであると提言しています。
AudioUKのマネージング・ディレクター、クロエ・ストロー氏はこのマニフェスト発表にあたり「世界のポッドキャストおよびオーディオブック業界が、英国におけるラジオの到達力の永続的な強さと相まって、指数関数的な成長を続けているため、英国政府はこの繁栄しているクリエイティブ部門を積極的に擁護し、育成することが不可欠です。英国の他のクリエイティブ産業と連携することで、オーディオ分野は国内および世界的に得られる膨大な機会を最大限に活用できるようになります。」とコメントしています。
日本でも同じような政策を検討してほしいところですが、まずはオーディオ領域の業界団体の設立から考えないといけないのが難しいところです。
ではまた。