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津田健次郎さんがAI声模倣で提訴、争点は「類似性」と権利侵害

人気声優の津田健次郎さんが、生成AIで声を模した動画をTikTokに無断投稿されたとして提訴しました。生成AIによる「声の権利侵害」が裁判で争われるのは初のケースとみられており、不正競争防止法違反やパブリシティー権侵害が主な争点となっています。本記事では、訴訟の経緯・争点・各方面の反応を詳しく解説します。

声優・津田健次郎さんが提訴に踏み切った経緯

津田健次郎さん(54歳)は、自身の声を生成AIで模倣した動画をSNSに無断投稿されたとして、訴訟を起こしました。生成AIによる声の権利侵害を裁判で争う初のケースになるとみられており、法曹界や音声業界から注目を集めています。

訴状によると、動画共有アプリ「TikTok」のあるアカウントには、低音で渋い声のナレーションが付けられた雑学などの動画が180本以上投稿されています。「首ポキは絶対にやめておけ」「カラスの賢さははっきり言ってネクストレベルだ」といった内容で、津田さんの声に酷似した音声が使われているとされています。

発信者特定に至らず、TikTok側を提訴

津田さん側がこのアカウントに対して法的手続きに乗り出したのは2025年6月のことです。TikTokの運営会社に対し、発信者情報の開示を求める裁判を東京地裁に起こしました。

東京地裁は2025年8月に権利侵害を認めて開示を命じ、同社は2025年2月時点の接続記録を開示しました。しかし、津田さん側がその情報をもとにプロバイダー(インターネット接続業者)に問い合わせたところ、接続記録の保存期間がすでに過ぎており、発信者の特定には至りませんでした。このため2025年11月、動画の削除を求めてTikTok側を提訴する形となりました。

訴訟の主な争点:「類似性」と「混同」

法務省関係者は、生成AIをめぐり声の権利侵害が争点となる訴訟は「例がないのではないか」としています。本訴訟では、以下の2つの法的根拠に基づいて津田さん側が主張を展開しています。

不正競争防止法違反

不正競争防止法は、広く認識されている商品などの表示と同一もしくは類似のものを使用し、混同を生じさせる行為に適用されます。経済産業省は2025年、ある人物と同一の声を出力できるAIで持ち歌ではない曲を歌わせて公開するなどした場合、同法で「対処可能」との見解を示しています。

パブリシティー権侵害

パブリシティー権は、著名人が自分の名前や肖像などを独占的に利用できる権利です。明文化した法令はありませんが、2012年の最高裁判決(ピンク・レディー事件)で、顧客を引きつける目的で他人の肖像等を用いた場合はパブリシティー権の侵害に当たるとされました。AIと知的財産権のあり方を議論する内閣府の検討会が2024年に公表した見解では、声もパブリシティー権で保護できるとしています。

原告・被告それぞれの主張

これまでに3回の争点整理手続き(非公開)が行われています。今回の訴訟における主なポイントは、①声が同一もしくは類似か、②混同を生じさせるか、③声の利用で視聴者を引きつけたか、の3点です。

原告(津田さん側)の主張

原告側は、「ツダケンの声がする」といった動画へのコメントや、津田さんの声と動画の音声に「高い類似性」があるとする音響分析の結果をもとに立証を図っています。パブリシティー権については、ありふれた内容の動画を声で差別化していると主張しています。

被告(TikTok側・投稿者)の主張

被告側は、同様の声質を持つ人は数多く存在し、投稿者が「友人の声だ」と別のサイトで説明していると反論しています。パブリシティー権についても、動画の内容へのコメントが多く、声で視聴者を引きつけているわけではないと訴えています。

法務省が今夏にも指針を公表予定

生成AIによる声の権利侵害をめぐっては、法務省が2026年4月、民事上の責任について議論する有識者検討会を発足させました。今夏にも、どのようなケースが権利侵害に当たるかの指針を公表する予定です。

委員を務める明治大学の今村哲也教授(知的財産法)は、「サインや顔写真などの類似性の判断は比較的容易だが、声は客観的な判断が難しい。声の法的保護を進めるには、具体的なケースで司法判断が示されていくことも重要だ」と指摘しています。

他の声優からも不安の声「社会全体で考えるべき問題」

こうした状況に対し、他の声優からも懸念が広がっています。アニメ「おそ松さん」などに出演する人気声優の福山潤さん(47歳)は、自身が声を演じたアニメキャラクターを無断で歌わせている動画を目にしたことがあると明かし、「自分の声がコントロールできない恐ろしさを感じた」と話しています。

福山さんは2024年から声優有志らとともに「NO MORE 無断生成AI」運動を展開し、声の無断利用防止を呼びかけてきました。「無断生成が横行すれば、若手声優の活躍の機会が減ってしまう。個人の声がなりすましや犯罪にも使われかねず、社会全体で考えるべき問題だ」と訴えています。

まとめ

声優・津田健次郎さんによる生成AIの声の権利侵害訴訟は、不正競争防止法違反とパブリシティー権侵害を主な争点として進行しています。「類似性」の立証が最大のポイントとなっており、音響分析やSNSコメントが証拠として活用されています。法務省による指針の策定も進む中、今後の司法判断がAI時代における声の権利保護の基準となる可能性があります。

参照元:https://www.yomiuri.co.jp/national/20260522-GYT1T00295/

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