世界のポッドキャスト市場が92億ドル規模に——動画がゲームチェンジャーに

調査会社Owl & Coが発表した「グローバル・ポッドキャスト・エコノミー・レポート2025」によると、2025年の世界のポッドキャスト市場の収益は92億ドル(約1兆3,500億円)に達し、前年比23%増となりました。成長を牽引したのは広告収入の拡大だけでなく、「動画」を収益化の手段として積極的に活用したパブリッシャーたちです。音声メディアのビジネスモデルが大きく変わりつつある現状を、レポートの内容に基づいてお伝えします。

市場規模と収益内訳:2025年の全体像

Owl & Coの創業者であり、Wonderyの設立者でもあるエルナン・ロペス氏が主導したこのレポートは、1,600以上のパブリッシャーから収集した30万件超のデータポイントと、世界100名以上のポッドキャスト関係者へのインタビューをもとに作成されました。81市場を対象に、直接広告・プログラマティック広告・コンシューマー収益・ブランデッドコンテンツ・その他の5つの収益ストリームを追跡しています。

2025年の世界市場の収益92億ドルは、2024年の75億ドルから大きく拡大したものです。収益内訳は以下のとおりです。

  • 直接広告(ダイレクト広告):53億ドル(2024年の42億ドルから増加)
  • コンシューマー収益:22億ドル(2024年の18億ドルから増加。Patreonサブスクリプションが牽引)
  • プログラマティック広告:14億ドル(前年比ほぼ横ばい)
  • ブランデッドポッドキャスト収益:2億ドル(2024年の3億ドルから減少)

調査対象企業の4社に3社(74%)が、2025年の収益は2024年よりも改善したと回答しており、業界全体として成長フェーズにあることが確認されています。

動画が収益ドライバーへ——「発見ツール」から「マネタイズ手段」へ

今回のレポートで最も注目されているのが、動画の役割の変化です。ロペス氏はニュースレター「Streamonomics」の中で、「同じパターンが繰り返し浮かび上がってきた。動画を単なる発見チャネルとしてではなく、収益化のレイヤーとして活用したパブリッシャーこそが、最も速く収益を伸ばした」と述べています。

レポートは「最大の恩恵を受けた企業や市場は、動画を発見ツールに加えて収益化の手段として強化した企業だった。純粋に音声のみに特化したポッドキャストは成長が鈍化、または収益を失った」と明記しています。

米国市場に限ると、2025年における収益成長の73%が動画関連の収益から生まれていると推計されています。米国内のビデオポッドキャスト収益は23億ドルに達しており、米国のポッドキャスト広告純収益に占める動画の割合は、2024年の28%から2025年には41%まで上昇しています。

米国が最大市場——世界6カ国の状況

国別では、米国が引き続き世界最大のポッドキャスト市場の地位を維持しています。2025年の米国市場の収益は60億ドルで、前年比27%増を記録しました。米国に次ぐ主要市場としては、中国・英国・ドイツ・スウェーデン・カナダが挙げられています。

ロペス氏が2016年にWonderyを設立した当時、ポッドキャスト業界の規模は年間約1億ドルと推計されていました。それが92億ドルに達した今、約10年で92倍の規模に成長したことになります。レポートは「92億ドルのポッドキャスト市場はいまだ成熟段階にある」と結論づけており、「新規参入企業にも勝機があり、既存企業も自らを再発明できる」としています。

「ポッドキャスト」の定義そのものが変化している

レポートはビジネス数値だけでなく、ポッドキャストという概念そのものの変容にも触れています。Owl & Coはこれまで「オンデマンドで消費できる、人の声を中心としたコンテンツ」という定義を採用してきましたが、ライブ配信後にポッドキャストとして公開される番組が登場するなど、音声・動画・ライブ・オンデマンドにまたがるフォーマットが増えています。ロペス氏はこの定義を「すでに時代遅れになっている」と指摘しています。

同氏はYouTubeが昨年示した姿勢を引き合いに出し、「制作者がそれをポッドキャストと呼ぶなら、われわれが異論を唱える理由があるだろうか」と述べており、業界全体での定義の柔軟化が進む見通しです。

動画シフトにはコスト面のリスクも

成長の恩恵を受けるには動画制作への投資が不可欠ですが、ロペス氏はコスト面での課題も指摘しています。レポート自体は制作コストの分析を対象外としているものの、「競争に耐えられるレベルの動画制作には多くの費用がかかり、その水準は上がり続けている」と述べており、動画シフトが全パブリッシャーにとって容易なわけではないことも示唆されています。

それでも全体として、世界のポッドキャスト市場は拡大フェーズが続いており、ビデオポッドキャストを軸とした収益多様化が業界の新たなスタンダードになりつつあります。広告主・パブリッシャー・プラットフォームいずれの立場からも、この市場の動向は引き続き注目です。

参照元:https://www.owlandco.com/insights/the-global-podcast-economy-is-worth-9-2b-video-is-changing-the-picture