Spotifyが2026年第1四半期(Q1)の決算を発表し、月間アクティブユーザー数・収益・利益率のすべてで過去最高水準を更新しました。AIを活用したパーソナライゼーション機能の拡充や、プレミアム加入者の着実な増加が業績を押し上げており、音楽・ポッドキャスト・オーディオブックを横断するオーディオプラットフォームとしての地位をさらに強固にしています。
MAU・プレミアム加入者ともに順調な成長
2026年Q1における月間アクティブユーザー(MAU)数は前年同期比12%増の7億6,100万人となり、ガイダンスの7億5,900万人を200万人上回りました。前四半期(2025年Q4)の7億5,100万人からも1,000万人純増しており、成長の勢いが加速しています。
地域別には北米と「その他地域(Rest of World)」がけん引し、モバイルフリーティアの機能強化が新規ユーザー獲得の加速に貢献しました。プレミアム加入者は前年同期比9%増の2億9,300万人で、四半期純増は300万人。ラテンアメリカとヨーロッパでの幅広い成長と、グローバルなプロモーションキャンペーンの効果が反映された数字です。
売上高・利益率・フリーキャッシュフローで過去最高を更新
Q1の総売上高は前年同期比8%増(固定為替レートベースでは14%増)の45億3,300万ユーロとなり、ガイダンスとほぼ一致しました。為替変動が売上成長率を約600ベーシスポイント押し下げた一方、固定為替レートベースでの成長率は着実に改善しています。
プレミアム収益は前年同期比10%増(固定為替レートベースで15%増)の41億4,800万ユーロ。加入者増加とARPU(1ユーザーあたりの平均収益)の維持・改善が主因です。一方、広告支援型(Ad-Supported)収益は前年同期比5%減の3億8,500万ユーロとなりましたが、固定為替レートベースでは3%増であり、ミュージック広告のインプレッション増加やポッドキャストスポンサーシップの成長が下支えしています。
粗利益率は前年同期比133ベーシスポイント改善し、Q1として過去最高の33.0%を記録。プレミアムセグメントの改善が主因で、ガイダンスの32.8%を上回りました。営業利益は前年同期比40%増の7億1,500万ユーロ(営業利益率15.8%)となり、こちらもガイダンスの6億6,000万ユーロを大幅に超過しました。
フリーキャッシュフローはQ1として過去最高の8億2,400万ユーロ。直近12ヶ月累計では32億ユーロに達し、2016年以来の累計フリーキャッシュフローは80億ユーロを突破しています。期末時点での手元流動性(現預金・短期投資等)は88億ユーロと引き続き強固な財務基盤を維持しています。
AI活用とプロダクト拡充が成長を支える
今期のプロダクト面での注目点は、AIを活用したパーソナライゼーション機能の大幅な拡充です。
まず、「テイストプロフィール(Taste Profile)」がニュージーランドのプレミアムユーザー向けにベータ提供を開始しました。Spotifyがどのようにユーザーの聴取習慣を解釈しているかを可視化し、ホームページに表示されるコンテンツをユーザー自身が積極的にコントロールできる仕組みです。
また、「プロンプテッド・プレイ(Prompted Playlist)」も一部市場でベータ提供が始まり、ユーザーが入力したテキストをもとにAIがプレイリストを自動生成します。音楽のバックグラウンドや作曲家との繋がりを解説する「About the Song」や「SongDNA」、オーディオブックのトレンドランキングを提供する「Audiobook Charts」(米国・英国)など、プラットフォーム全体のエンゲージメントを高める機能も相次いで投入されました。
さらに、動画コンテンツのコントロール機能を強化し、ユーザーがオーディオ中心体験か動画強化体験かを自分で選択できるようになりました。
コストと今後の見通し
Q1の営業費用は前年同期比5%減の7億8,000万ユーロとなりました。ただし、為替変動とソーシャルチャージ(株価連動型の雇用税)の影響を除いた実質ベースでは前年同期比17%増であり、主にマーケティング費用の増加とクラウド・AI関連コストの上昇が要因です。今期のソーシャルチャージは株価下落の影響でガイダンスより4,900万ユーロ低い(マイナス)3,900万ユーロとなりました。期末の全社員数は7,258名です。
Q1の好調な結果を受け、経営陣は「2026年は成長加速と利益率改善が見込まれる」と強調。フリーキャッシュフローについても前年比で大幅な成長が続く見通しを示しています。Q1中には3億600万ユーロ(約3億6,100万ドル)の自社株買いと、13億ドル相当の転換社債の償還も実施されており、株主還元と財務健全性の両立が図られています。
まとめ
Spotifyの2026年Q1決算は、MAU・売上・収益性・キャッシュフローのすべての指標でガイダンスを達成または上回るという力強い内容となりました。AIを核としたパーソナライゼーション戦略の深化と、音楽・ポッドキャスト・オーディオブックにまたがるコンテンツエコシステムの拡充が引き続き成長の原動力です。日本のポッドキャスト・音声広告市場にとっても、世界最大級のオーディオプラットフォームの動向は今後の市場拡大を占う重要な指標となるでしょう。
参照元:
https://s29.q4cdn.com/175625835/files/doc_financials/2026/q1/Q1-2026-Shareholder-Deck-FINAL.pdf