Spotifyがワンタップで広告や番組の区切りを飛ばせる新機能「Skip Ahead」をテスト中であることが明らかになりました。米NYU教授でAmplifi Media創業者のSteven Goldstein氏が、この動きをSpotifyの収益構造から読み解いています。

Spotify、広告を飛ばしやすくする新機能「Skip Ahead」をテスト
Spotifyはアプリ内で新しい「Skip Ahead」ボタンをテストしています。従来の15秒単位での早送りではなく、ワンタップで広告break・プロモーション・その他のコンテンツをまとめて飛ばせる機能で、米国・英国の一部のPremium会員向けに提供されているとのことです。Goldstein氏自身のアプリにもすぐに表示されたとしています。
この機能についてSpotifyから公式な発表はなく、Podnewsを運営するJames Cridland氏が最初に発見し報じました。米メディアSemaforのMax Tani氏も追随し、記事の中でポッドキャスト業界の関係者が強い危機感を抱いていると伝えています。Crooked Media共同創業者のTommy Vietor氏はX(旧Twitter)上でSpotifyを名指しし、皮肉を込めて批判したとされています。Spotifyの広報担当者はSemaforに対し、社内では日常的にさまざまなテストを行っており、その一部が正式機能として採用され、それ以外は今後の製品開発の参考にされる、という趣旨のコメントを寄せています。
Skip Ahead機能で飛ばされる対象は、通常の広告breakにとどまらず、Spotify自身が抱えるオリジナル番組「The Bill Simmons Podcast」内の広告も含まれるとされています。
なぜ注目すべきか
Goldstein氏は、ポッドキャストがこれまでSpotifyにとって「単なる音楽アプリではない」ことを示す重要な柱であり、音楽ストリーミング事業の高コスト構造から収益源を多角化する狙いを担ってきたと指摘しています。Spotifyはこれまで、Megaphoneの買収やSpotify Ad Exchangeの立ち上げ、YouTubeに対抗するための動画ポッドキャストへの注力など、ポッドキャスト広告事業に本腰を入れる姿勢を示してきました。
それにもかかわらず広告をスキップしやすくする機能が登場した背景として、Goldstein氏は、この機能がSpotify社内でも「ユーザーの継続利用(リテンション)」を担当する部署主導で開発されている可能性がある、とあくまで推測を述べています。この立場から見れば、広告breakは収益源ではなく、リスナーが離脱するポイントとして捉えられている可能性があるとしています。リスナー体験自体は改善するかもしれない一方で、パブリッシャーがSpotify上で確実に収益化することは難しくなる、とGoldstein氏は述べています。
Spotifyの収益構造から見えるもの
Goldstein氏は、Spotifyの収益構成を踏まえると、この方針転換にも一定の合理性があると分析しています。2025年において、Premium(有料会員)サブスクリプションはSpotify全体の収益の89%を占め、音楽とポッドキャストの両方を含む広告収益(Ad-Supported segment)は残りの11%にとどまるとしています。Spotifyはポッドキャスト広告の売上を単独では開示していないため、記事内で示されているポッドキャスト広告が全体収益に占める割合(およそ4%)はGoldstein氏自身の試算であり、大手広告代理店を含む複数の情報源にも確認のうえで算出したものだと説明されています。
Goldstein氏は、Spotifyが過去にも同様の混乱を招いた例として、前年に導入した「公開再生回数」の表示機能を挙げています。パブリッシャー側から、広告主がエピソードごとの成績を細かく分析するようになることへの懸念が上がり、Spotifyは数日のうちに大まかな視聴者数の区分表示へと方針を修正した経緯があるとしています。ただし、今回のSkip Ahead機能はそれとは性質が異なり、社内テストでリスナーの視聴継続時間が伸びるという結果が出れば、そのまま定着する可能性があると述べています。
また、Podnewsによる分析(OP3のデータに基づく)として、Spotifyは世界のポッドキャストダウンロード数の少なくとも4分の1を占め、多くの国で最大のポッドキャストプラットフォームになっているとの推計も紹介されています。
パブリッシャーへの示唆
Goldstein氏は、Apple・Spotify・YouTubeといった大手プラットフォームが、ポッドキャスターに個々では築けない規模のオーディエンスへのアクセスを提供する一方で、そのオーディエンスがコンテンツをどう体験し消費するかについても大きな支配力を持っていると指摘しています。これは同氏が以前から論じている「Liquid Content(音声・動画・SNSが融合する時代)」の議論とも重なるテーマだとしています。
プラットフォームは自社の収益にとって最も重要な指標を最適化する存在であり、SpotifyにとってはエンゲージメントとPremium会員の維持がその中心にあるとGoldstein氏は述べています。そのうえで、パブリッシャーが取るべき対応として、まずは声を上げること、そして過去にSpotifyが方針を修正した例があることを踏まえつつも、リスナーとの直接的な関係、コンテンツに組み込まれた広告フォーマット、特定のプラットフォームに依存しない分散した配信体制を持つことの重要性を挙げています。一つのプラットフォームでの一つの機能テストが自社の収益構造を左右してしまう状況こそが、本質的に取り組むべき課題だと結んでいます。
参照元:https://www.linkedin.com/pulse/where-podcasting-fits-spotify-steven-goldstein-53o4c/


