Amazonオーディブルが2023年10月27日より平野啓一郎さんの新作書き下ろし小説「息吹」を声優の立花慎之介さんの朗読で配信しました。今日はこのニュースを紹介します。
Audible / オーディオファースト作品第8弾平野啓一郎さん書き下ろし新作『息吹』立花慎之介さん朗読で本日Audibleにて配信スタート
この作品はAudibleで最初に配信され、一定期間後に書籍としても発売される「オーディオファースト作品」として楽しむことができるオリジナル小説となっています。
「かき氷屋が満席だったかどうかで、生きるか死ぬかが決まる人生って、何なんだろう? そういうものなんだろうか? 人の一生って、そういう偶然の積み重ねなの?」
とある夏の日、中学受験を控えた一人息子を模試会場に迎えに行った齋藤息吹は、勘違いから、自分が一時間も早く到着してしまったことに気がつく。時間つぶしに入ろうとしたかき氷店は満席。仕方なく、十数年ぶりに入ったマクドナルドで、隣の席から聞こえてきた気懸かりな会話に、彼はにわかに不安を募らせてゆく。些細な偶然から、間一髪のところで命拾いをした夫の興奮を、戸惑いつつ、安堵とともに受け止める妻の絵美。 しかし、その日から家族の平穏な日常は、少しずつ、「もう一つの別の日常」によって急速に浸食されてゆく。精神と肉体の危機を潜り抜けた先に、家族を待ち受けていた衝撃の結末とは?
原作者と朗読者のコメントも発表されました。
平野啓一郎さんコメント
『息吹』は、偶然がもたらす人生への影響を、もう一つの人生という視点から浮き彫りにした短篇で、その大きな分岐のきっかけは、日常の中のほんの些細な出来事なのだという点を強調したかった。それなりに抽象度の高い物語だけに、耳で聴いていてよくわかるように、各場面のコントラストを工夫した。立花慎之介さんの朗読は、どうしても黙読が前提となっているような私の文体を、立体的に立ち上がらせてくれて、作品に空間的な広がりを与えてくれた。読書という行為では不可能な、現実と非現実とが融け合う感覚を目を閉じて味わうという醍醐味に浸ってほしい。
立花慎之介さんコメント
収録時にディレクターさんといろいろディスカッションさせていただいたんですが、今回の収録は「色をなるべく付けずに、聞いている人が何かをしながらでもサラッと聞いていられる感じ」を目指しています。という事だったので、普段の声優のお仕事とは真逆な技術を求められた収録でした。感情とか台詞の起伏とか、そういうのをなるべく無くして「フラットな聞き感」というのを僕も目指してやらせていただきました。まあ…難しかったです(笑)普段の台詞や演技で求められることが「感情の起伏」なので、フラットに喋るというのが改めてこんなにも難しい事だったのかと、とても勉強になりました。また作品内容としましては、実は僕自身も先日リアルに「大腸内視鏡検査」をしたばかりだったので、こんな偶然ある?そしてめっちゃ自分と酷似してる部分があるし、ものすごくリアルな描写なんですが!!って実際に僕も恐怖を間近に感じてしまいました。いやぁ~偶然って恐ろしいですね!!台詞の押しつけにならず、聞いて空想できる余白を残したリーディングになっていますので、お時間の空いたときや家事をしながらなど、場所を選ばず聞いてもらえると思っております。是非一度お聞きくだされば幸いです。
再生時間は2時間ほど。読書の秋にぴったりの作品かと思います。
ではまた。