米広告業界団体IABが2026年9月16日にニューヨークで開催した「2026 IAB Podcast Upfront」で、CEOのDavid Cohen氏とMedia Center DirectorのJason Adamski氏が、ポッドキャスト市場の成長と課題について語りました。

クリエイターとリスナーの「関係性」が強み
IABのCEOであるDavid Cohen氏は、2026 IAB Podcast Upfrontの冒頭で、ポッドキャストの次のフェーズを決定づけるのは、単なるオーディエンスの拡大や広告費の増加ではなく、クリエイターとリスナーの間に築かれる関係性であると述べました。
Cohen氏は「ポッドキャストには、定量化しにくく、再現することが非常に難しいもう一つの資産がある。それが関係性だ」と語り、リスナーは自ら聴く番組やホストを選び、その声や視点、人柄に親しみを持つようになると説明しました。こうした関係性により、ホストがブランドを紹介する際には他のメディアでは作り出しにくい真正性が生まれ、繰り返し聴かれることでオーディエンスは単なるインプレッションの集合ではなくコミュニティへと変化するとしています。
広告費はまだ視聴の伸びに追いついていない
一方、IAB Media Center DirectorのJason Adamski氏は、ポッドキャスト市場の成長が同時に大きな課題も生んでいると指摘しました。アテンションは複数のプラットフォームに分散し、オーディエンスは流動化しており、測定手法は消費実態の変化に追いついていないといいます。
Adamski氏によると、デジタルオーディオは現在、週間で2億2000万人にリーチし、1日あたりの消費時間は87分と、ソーシャルメディアとほぼ同水準に達しています。しかしデジタルオーディオが占めるのはメディア時間の16%にとどまる一方、広告費に占める割合はわずか2%にとどまっています。
それでもポッドキャスト広告の成長は他分野より速く、2025年の広告収益は前年比17.6%増の約30億ドルに達し、デジタル広告全体の伸びを27%上回ったとしています。2026年第1四半期には、上位10社のポッドキャスト広告主が1億3000万ドルを支出したほか、前年には1,300ブランドが新たにポッドキャスト広告に参入したとAdamski氏は述べています。ポッドキャストはデジタルメディア時間の約5%を占めるものの、デジタル広告費に占める割合は1%未満にとどまっており、既存の広告購入インフラでは中小・独立系ポッドキャストが広告市場から取り残されがちであることが一因だと指摘しています。
動画が「ポッドキャストの入り口」に
Adamski氏は、Cumulus MediaとSignal Hill Insightsの調査を引用し、動画でポッドキャストを視聴する消費者の割合が2026年に49%に達し、4年前の30%から増加したと紹介しました。Z世代に限ると、37%が音声よりも動画でポッドキャストを消費することが多いと回答しているといいます。Adamski氏は「動画はポッドキャストへの入り口になった。次世代がこのメディアを発見し、選択し、消費する方法だ」と述べました。
この変化は、測定面での課題も浮き彫りにしています。従来の測定基盤であるダウンロード数では、リスナーが音声と動画、複数のデバイスやプラットフォームを行き来する消費実態を十分に捉えられないためです。Adamski氏は、YouTubeがポッドキャストのダウンロード基準を採用していない一方、Spotifyは動画コンテンツをリスニングモードで消費した場合に音声基準を適用しない可能性があり、Apple Podcastsは消費形態にかかわらずダウンロード数を報告するなど、プラットフォームごとに測定方法が異なる点を例として挙げました。「3つのプラットフォーム、3つの方法論があり、キャンペーンを横断して比較するクリーンな方法がない」と述べています。
IABはこうした分断への対応として、異なる測定基準をどこに適用すべきか、パブリッシャーがマルチプラットフォーム配信やタイムシフト型アプリをどう開示すべきかを示す新フレームワーク「Podcasts Continue to Evolve」を同日発表しました。今後はHLSや、ポッドキャストの技術的な測定ガイドラインの更新にも取り組む方針です。
生成AIは「ワークフローのために、マイクの代わりではない」
Adamski氏は、生成AIの活用も業界が向き合うべき変化の一つだとしました。Descriptの調査によれば、ポッドキャスト制作者の約3分の2がすでに生成AIを活用しており、編集や文字起こしからチャプター要約、クリップ作成まで用途は多岐にわたるといいます。ただし、成功しているクリエイターほど、制作を効率化するためのAI活用と、番組の魅力を支える人間らしさを代替するためのAI活用とを区別しているとし、「AIはワークフローのためであり、マイクの代わりではない」と述べました。翻訳など一部の用途は例外になり得るとしつつ、「オーディエンスとつながる番組は、紛れもなく人間らしく聞こえる番組だ」としています。IABは2027年にも、AIと自動化、AI生成コンテンツ、信頼性や開示のあり方について追加の取り組みを予定しています。
「ポッドキャストは大人になりつつある」
Adamski氏は、ポッドキャストがもはや単一のフォーマットやプラットフォーム、測定システムで定義できる段階を超えたと総括しました。「ポッドキャストは大人になりつつある。5年前よりも複雑になり、よりマルチフォーマットで、よりマルチプラットフォームで、あらゆる面でより多様になっている」と述べています。


