The Audio Insurgent発表のポッドキャスト市場分析、好調に見えるが、実は危険信号も?

今回はThe Audio Insurgentが発表した2019年から2023年にかけてのポッドキャスト統計レポートを紹介したいと思います。

The Audio Insurgent / The Podcast Growth Shell Game and How to Fix It

まずレポートで紹介された3つのグラフをみてみましょう。対象は米国のトップの商用ポッドキャストパブリッシャーで、公共のラジオネットワークを除外したものとなっています。

月間リスナーの推移

2019年4月から2023年4月にかけて、リスナー数は5,500万人から1億600万人に、約2倍に増えています。見事にホッケースティック型の成長曲線を描いています。過去数年間にポッドキャストに注がれた関心、投資、興奮のすべてが説明できる結果となっています。

月間ダウンロード数

2019年4月から2023年4月にかけて、ダウンロード数は3億2,600万回から8億8,600万回に、約3倍に増えています。4年間で大きく成長はしているものの、昨年に比べて今年は下降しています。

パブリッシャーの配信番組数

2019年4月から2023年4月にかけて、番組数は337番組から1,397番組に、約4倍に増えています。確かに成長傾向です。しかし、その成長ペースは微妙に鈍化していることがグラフから読み取れます。

これら3つのグラフは2倍成長、3倍成長、4倍成長と、順調に成長しているように見えます。しかし、このレポートではもう少し踏み込んだ見方をしています。

ポッドキャスト業界には大きな危険信号がでている?

パブリッシャーは膨大な量の新しい番組で成長を推進してきましたが、それらの番組は平均してリスナー数やダウンロード数を増やす効率が低下している傾向がみられるというのです。2023年の1番組あたりのリスナー数は2019年の半分になっています。さらに1番組ごとのダウンロード数も3分の1に減少しています。新たに作られた番組は、古い番組に比べてパフォーマンスが低かったため、番組数の増加に伴うリスナー数とダウンロード数の増加に繋がっていないというわけです。

そして、現在パブリッシャーは音声広告収入減少への懸念から、新規番組の成長を鈍化させる傾向があり、実際にダウンロード数の低下につながっていることがわかります。リスナーは増加しても、ダウンロード数は減少しているのです。

問題はパブリッシャーが新しい番組を成長させる方法をわかっていないという点だとこの記事では指摘しています。

ポッドキャストパブリッシャーはどうすればいいのか?

この危険信号にたいして、ポッドキャストのパブリッシャーが受け入れ、理解し、行動する必要があるものとして、3点の戦略が紹介されています。

継続的かつ拡大する新しい番組の流れが必要。
他の出版メディアと同様に、リスナーに新しいものを提供する必要があります。リスナーは同じものを消費し続けるだけではありません。彼らは新しさを求めます。リスナーは、あなたが過去に作った作品をどれだけ気に入っているかに関係なく、「今日は私になにを教えてくれるんですか?」と考えています。

新しいスタイル、フォーマット、ストーリーを伝える方法を実験する必要がある。
ポッドキャストには新しい番組だけでなく、より良い番組も必要です。独創的なショーが必要です。リスナーは皆、エキサイティングで新しいものが大好きで、たとえ長期にわたる人気シリーズであっても最終的には飽きてしまいます。

既存の番組への視聴者を拡大することにも重点を置く必要がある。
長期的に勝利を収めるパブリッシャーは、番組の大小を問わず、自社のポートフォリオ全体での視聴者の開拓を把握しているパブリッシャーです。そして、番組に成長について明確な道筋がない場合は、おそらくそれをポートフォリオの一部として残すべきではありません。

結構考えさせられる話ですね・・・。日本ではまだこの領域まで行ってないと思いますが、国内でもポッドキャスト番組が増加していくにつれ、1番組あたりのパフォーマンスが下がっていないかを継続的にウオッチしていく必要はありそうです。
ではまた!