米国の連邦議会調査担当者が、薬物関連のポッドキャストスパムへの対応を巡り、Spotifyが後手に回っていたと指摘する報告書を公表しました。報告書によると、Spotifyはメディア報道を受けて、3,500を超えるアカウント、3,000を超える番組、5万7,000を超えるエピソードを削除しました。報告書は、AIによって有害コンテンツが大規模に生成しやすくなるなか、Spotifyの経験がポッドキャスト業界への警鐘となるべきだと論じています。本記事では報告書の内容を紹介します。
事の発端と上院議員による追及
Spotifyは、多くの番組が処方箋なしで医薬品を販売する違法オンライン薬局の偽装であると把握した後、5万7,000を超えるポッドキャストを削除したと報じられています。この問題は昨年、CNNとBusiness Insiderによって最初に指摘され、両社は「My Adderall Store」といった名称の番組でOxyContin、Adderall、Xanaxなどの医薬品が販売されている偽ポッドキャストを多数特定しました。
これを受けて、マギー・ハッサン上院議員(民主党・ニューハンプシャー州)がSpotifyに説明を求め、1年後にその調査結果をまとめた報告書を公表しました。
削除件数の急増が示す課題
Spotifyは議会に対し、2025年に薬物関連コンテンツを理由として3,500を超えるポッドキャストアカウントに対して措置を講じたと説明しました。この措置は3,000を超える番組、5万7,000を超える個別エピソードに及びました。一方、2024年に同様の違反で措置の対象となったアカウントはわずか87件だったとされています。報告書は、この急増がSpotifyのモデレーションシステムがメディアの注目を受ける前に有害コンテンツを効果的に検出できていたのかという疑問を生じさせると論じています。
Spotify側の主張
Spotifyは調査担当者に対し、問題のコンテンツは主に外部サイトの可視性を高めるための検索エンジン最適化(SEO)目的のスパム攻撃であり、Spotify上で直接薬物を販売しようとするものではなかったと反論しました。同社によれば、関与したポッドキャストの94%は再生数がまったくなく、99%は再生数が10未満だったとされています。また、対象となった素材は「ほとんど音声コンテンツを含まない」もので、検索結果を操作するためのキーワード偏重のタイトルやメタデータで構成されることが多かったとしています。
報告書が指摘する「死角」
報告書は、再生数が限定的であってもユーザーへのリスクはなくならないと指摘します。こうした手口は、マルウェア配布やフィッシング詐欺、偽造医薬品などの犯罪活動に関与するサイトへユーザーを誘導しうるためです。
さらに報告書は、Spotifyがポッドキャストコンテンツに埋め込まれたハイパーリンクへのユーザーの操作を追跡していないという大きな死角を指摘しています。そのため、疑わしいコンテンツに接したユーザーが最終的に薬物販売サイトなどへクリックしたかどうかを、同社はほとんど把握できていないとしています。実際、2025年12月の委員会スタッフによる調査では、外部サイトへのリンクを伴う公開プレイリストが新たに発見されました。
AIが問題を複雑化
報告書は、AIが問題の管理をより困難にしていると指摘します。AIツールが音声、説明文、アートワーク、メタデータを大規模に生成できるようになったことで、悪意ある行為者が大量のスパムコンテンツを迅速に作成できるようになったためです。調査の過程で、委員会スタッフは処方薬や規制物質について論じるAI生成のポッドキャストを特定しています。報告書は、Spotifyがモデレーションシステムを強化した一方で、依然として事後的な取り締まりに過度に依存していると結論づけています。