先日から引き続き、BBCワールドサービスのアダム・ボウイ氏が運営する個人ブログ「adambowie.com」の記事の紹介です。「英国におけるYouTube PodcastとYouTube広告の難問」と題したコラムで、これまたとても興味深いものなので簡単にお伝えします。
adambowie.com / YouTube Podcasts in the UK and the YouTube Advertising Conundrum
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アダム・ボウイ「YouTube / YouTube Musicでポッドキャストが聴けるようになれば、リスナーは激増する可能性がある。しかし・・・」
記事の執筆時点、2023年10月13日において、英国で最もよく聞かれているポッドキャスト25番組のうち8番組のみがYouTubeで聴取可能です。これは、YouTube MusicがGoogle Podcastsの同等の代替品としての準備がまだ整っていないことを意味します。
もちろん今後増える可能性はありますが、人気番組の対応がすぐになされていないことがポイントです。
一部のポッドキャスターがYouTubeに関して抱えている可能性のある非常に重要な問題、それが広告です。YouTubeには広告に関してかなり厳しい規則があり、一部のポッドキャスターがYouTubeへアップロードしたくないと考える可能性が十分にあります。
実際、YouTube展開しないポッドキャスト番組があることには理由があるというのです。主にYouTubeの広告ガイドラインと、ポッドキャスト配信の仕組みの2点です。
まず広告ガイドラインについて。
まずYouTubeの利用規約では、動画作成者が自分の動画に広告を埋め込むことを許可していません。YouTubeは、ビデオ広告 (プレロール、ミッドロール、ポストロール)、画像オーバーレイ、ビデオバンパーなどの広告をYouTubeが提供している場合、サードパーティーのスポンサーや広告主のプロモーション、スポンサーシップ、その他の広告を自分の動画に含めることはできません。したがって、YouTuberはサードパーティーの広告をビデオに単純に埋め込むことはできません。それができるのはYouTubeだけです。YouTuberは、YouTubeのルールの範囲内で、プロダクトプレースメント、スポンサーシップ、レコメンドなどを動画に埋め込むことができるだけです。
そして、ポッドキャストについても同じルールが適用されるため、ポッドキャスターにとっては大きな問題になるでしょう。
どうしてもYouTube Musicでポッドキャストを配信したければ、YouTube専用に別途、広告なし版のエピソードを作って配信していく必要があるということです。YouTube広告収入を得ることができるポッドキャスト番組であれば、収益化可能になるにせよ、小さな番組では収益対象からはずれてしまい、配信先としてマネタイズ的には意味がないプラットフォームということになってしまいます。いや、意味がないどころか、他のマネタイズ可能なプラットフォームの配信を食ってしまう可能性もあり、マイナスでしかないと考えるポッドキャスターの声も実際に耳にします。
ホストリード広告についても、「その旨をYouTubeに通知し、該当するすべてのポリシーに従う必要があります。」というルールとなります。
これもポッドキャスターにとって大きな問題となるでしょう。
ホストリード広告をとれるほどの人気ポッドキャスターにとって、こんなルールは困りますよね。過去のホストリード広告がポリシーに反していないかをチェックすることなど実際に可能なのかなど、疑問点も多いところです。
続いてポッドキャスト配信の仕組みについて。
YouTubeはポッドキャストのRSSフィードからの取り込みを展開する予定ですが、これはRSSパススルーではないことも問題です。ポッドキャストをYouTubeにアップロードすると、YouTube側が音声をホストすることを意味します。これは、Apple Podcastなどの他の大手ポッドキャストプラットフォームとは大きく異なる仕組みです。Apple PodcastやAmazon Musicは音声をホストせず、代わりに音声再生がリクエストされるたびにリスナーをポッドキャスト配信サービスにリダイレクトしています。
YouTubeがパススルーをしない結果、ポッドキャスターはリクエストの総数や内容を知ることができなくなります。ポッドキャスト分析プラットフォームも使えなくなり、またポッドキャスト広告を動的に挿入することもできません。
ポッドキャストの効果測定や広告配信がまともにできないというのも大きな問題です。米国のIABの調査によると2022年には収益ベースで、すべてのポッドキャスト広告のうち92%が動的な広告挿入となっています。ポッドキャストでスタンダードな広告配信手法が、YouTubeでは機能しないとなると、ポッドキャスター、アドテク事業者、広告代理店、広告主にとっても大きな影響があるはずです。
こうした問題が原因で、いくつかの大きなポッドキャスト番組がYouTube / YouTube Musicに対応しないままになるでしょうか?・・・今はわかりません。しかし時間が経てばわかるでしょう。
ということで日本での展開前に、海外ポッドキャスターのYouTubeポッドキャスト対応の動きは引き続きウオッチしていきたいと思います。
なお日本国内の音楽サブスクリプションサービスとして、YouTube Musicは、Amazon Music / Spotify / Apple Musicよりもシェアは少なく、10%未満です。日本ではポッドキャストプラットフォームとしてはまだそれほど気にしなくともよいサービスであるとも言えますが。引き続きなにかあればお伝えしていきます。
ではまた!